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古道具に囲まれた日常に溶け込む宿―函館「SMALL TOWN HOSTEL」

2017年12月1日、函館西部地区。かつて空っぽだった空き家の窓に、ぽっと明かりが灯りました。そこは、古い佇まいがそのまま残った宿「SMALL TOWN HOSTEL」。

”小さな町の宿”という意味の、その名前に隠されたもう一つの意味やオーナーさんの想いとは一体どんなものなのでしょうか。坂道の途中に現れるこの建物の脇にある階段をかつかつのぼって、こっそり中を覗いてみました。

小さな町に広がる世界

SMALL TOWN HOSTELは、函館の有名な観光スポットである金森倉庫から徒歩5分のところにあります。その宿を含む、車で10分もあれば回れてしまうような小さな地域を、西部地区と呼びます。歴史的な古い建物が立ち並ぶそのエリアに、一際ずっしりと構えた築約100年の建物、大三坂ビルヂング。その中に、SMALL TOWN HOSTELはあります。

SMALL TOWN HOSTELという名前の由来は、西部地区を小さな町と捉えたその名の通りの意味。そしてもう一つ、大三坂ビルヂングという建物自体をひとつの小さな町、と捉えた意味も込められているそうです。そのためこの建物には現在、宿だけではなく、シェアオフィスやレストラン、キャンドルショップも入っています。

古いものを蘇らせる

▼重心が低めの心落ち着く共有スペース
古道具に囲まれた日常に溶け込む宿―函館「SMALL TOWN HOSTEL」

この宿の魅力は、なんといってもこの古い佇まいの中に広がる、温かくてどこか懐かしくて、だけど出逢ったことのない新しい空間。リビングに置かれた不揃いな椅子や、ミシン台をアレンジして創られた洗面台、そして、ぱちぱちと燃える薪ストーブの炎。それらすべてが、身にまとっていた要らないものを溶かしてくれるような、そんな居心地の良さを与えてくれます。

古道具に囲まれた日常に溶け込む宿―函館「SMALL TOWN HOSTEL」

函館に変わらぬ街並みを

▼箱バル不動産の富樫さん、蒲生さん、荢坂さん
古道具に囲まれた日常に溶け込む宿―函館「SMALL TOWN HOSTEL」

この宿を立ち上げたのは、古い建物を再生して函館の街並みを保存するために結成された、箱バル不動産。函館で育ったUターンのメンバーが多く、地元としての函館に魅せられ、現在は建築、不動産、パン屋さんなどそれぞれ函館でほかの生業を持ちながら、空き家再生や函館移住計画などに取り組んでいます。街並み保存とは、ただ建物を残しておくだけではなく、そこにあった暮らしをも守っていくことなのです。

スモールな町の規模感だからこそ、大切にしたいもの

箱バルさんはこの宿を通して、住んでいる自分たちだからこそおすすめできるスポットを紹介したり、西部地区で小商いをやっているかっこいい仲間たちを紹介したりしたいという想いがあるそうです。宿名にあった小さな町、というのはただ町の規模感を表すのではなく、「こんにちは! ○○さんに紹介してもらって遊びに来ました!」とふっと街に溶け込めるような、住んでいる人たちとの身近な繋がりも表しているそうです。

完成までの足跡、手跡

▼DIYサポーターさんたちと一緒にリノベーション
古道具に囲まれた日常に溶け込む宿―函館「SMALL TOWN HOSTEL」

SMALL TOWN HOSTELは、「てしごと」と「地域」を大切にして創られました。宿の内装は、DIYサポーターとして来てくれた100人近い方々と一緒に創り上げたそうです。そして、床材や漆喰などは、地域で見落とされていた廃材を利用しています。

箱バル不動産は、地域にもともと根付いていたものに愛着をもっているからこそ、このように函館の町に溶け込んだ宿が誕生したのです。「この宿は、町のおかげで成り立っているんです」と笑う、箱バル不動産の代表、蒲生さん。オーナーさんが地域を愛しているからこそ、地域にも愛される宿になっているのです。

▼壁には、ホタテの貝殻を再利用した伊達産の漆喰を使用
古道具に囲まれた日常に溶け込む宿―函館「SMALL TOWN HOSTEL」

人々の暮らしをそっと覗く旅

▼箱バル不動産代表、蒲生さん
古道具に囲まれた日常に溶け込む宿―函館「SMALL TOWN HOSTEL」

宿を始めてから、蒲生さんが嬉しかったのは「ここに来てなかったら、あんなところ見つけられなかった!」とゲストさんに言ってもらえたことだそうです。そのように、ここは「暮らしを見つける宿」というのをコンセプトにしています。細かく予定を立てて観光に来るのではなく、まずは宿に来て、地元の人だからこそ知っている素敵な景色や魅力ある人を紹介してもらい、旅を組み立てていくのもおもしろいかもしれません。

スモールタウンの住人に

箱バルさんの目的は、宿を始めることではありません。目指すべきゴールは、この宿に泊まった方が、住んでいる人と仲良くなって、この街を気に入ってくれて、西部地区の空き家を利用して小商いを始めてくれる方がでてきてくれること。そのようにしてこの情緒溢れる函館の街並みを残すことです。

それほど、函館への強い想いをもって立ち上げられたこの宿は、徒歩圏内の観光地よりも、近くの喫茶店や手作りのパン屋さんへ足を向かせてくれるような、住人目線の旅を始められるところなのです。

▼函館のレンガを焼く窯に使われていた丈夫なレンガを再利用した薪ストーブ
古道具に囲まれた日常に溶け込む宿―函館「SMALL TOWN HOSTEL」

函館の四季は特にはっきりしています。春には桜を、夏には海を、秋には紅葉、そして寒い冬にはあたたかい薪ストーブの火を囲んでみんなでお喋り。季節ごとにたのしめる函館の拠点を、是非SMALL TOWN HOSTELにしてみてはいかがですか?

SMALL TOWN HOSTEL Hakodate
所在地:北海道函館市末広町18-25
電話:0138-83-8742
料金:ドミトリー3,700円~、個室6,300円~

筆者について

ずー

ずー

北海道恵庭市出身。恵庭にある紅茶の喫茶店、アグラクロックオーナー。背中のリュックとたびするのがすき。言葉がすき。紙がすき。ライブハウスがすき。お喋りがすき。夢中に飛んでく夢中飛行士。