札幌のサケの生態がみるみるわかる!「豊平川さけ科学館」

北海道に生息している魚といえば、やはり全国的にも有名なのはサケ。昔から土産物としてサケをくわえた熊の木彫りがあったり、春になれば稚魚を放流する様子がニュースで紹介されたり、飯寿司や石狩鍋といったサケを使った郷土料理があったり……。

とにかく道民にとって身近な存在であるサケですが、それでは、そんなサケについてどれほどのことを知っていますか? その生態は? 種類は? 生息数は? いざ訊かれると、意外と答えられないサケにまつわるいろいろなこと。豊平川さけ科学館で、楽しく学んでみましょう!

市民の、市民による、市民のための施設

豊平川さけ科学館は、真駒内公園内にあります。ログハウス風の建物で、すぐ横には豊平川と真駒内川が流れている、絶好のロケーションです。ちなみに鮭の正式名称は「サケ」と表記しますが、科学館ができた当初は学者の間でも平仮名が使われていたため、館名が「さけ」という表記になったのだそう。

もともと豊平川は、サケが帰ってくる美しい川でした。しかし、戦後の人口増加などによって水質悪化が進み、サケの回帰は途絶えてしまいます。1978年、豊平川に再びサケを呼び戻そうという声が上がりました。「カムバックサーモン運動」として市民自ら札幌市、北海道、国、警察、関係団体にまでかけあい、翌年には稚魚の放流が実現。以来、放流は毎年行われています。

豊平川さけ科学館が開館したのは、それから数年後の1984年のこと。これも「サケについて学習するための施設が必要だ」という市民の声がきっかけとなって生まれたものでした。豊平川さけ科学館は、まさに「市民の、市民による、市民のための」施設なのです。

サケの生態をわかりやすく展示

館内に足を踏み入れると、両側に掲げられた大きなパネル展示が目に飛び込んできます。サケの生態が分かりやすく解説された、展示ホールです。サケの剥製によるジオラマ展示もあり、産卵行動の様子がよりリアルに学べるようになっています。ちなみに入口から左手奥にはサケの実物大模型もあり、訪れる人の記念撮影スポットになっています。

▼入口から入って左手にはサケの成長の展示が

▼右手には産卵の様子がジオラマ展示されている

図書コーナーにはサケに関する本はもちろん、それ以外の魚や虫に関する本なども置いてあります。図書カードを作れば、3冊まで2週間借りることができるそう。

オショロコマやイトウも

▼飼育展示室には、コの字型に水槽がズラリ!

展示ホールから飼育展示室に進むと、いよいよ生きたサケとのご対面です。壁面にズラリ並んだ水槽には、さまざまなサケの仲間が飼育されています。カラフトマスやギンザケ、マスノスケなど、さまざまな魚を観察でき、中には豊平川最上流にすむオショロコマなど、日本では珍しい種類もいるということなので、なかなか貴重な体験ができそうです。

地下に行けば地下観察室もあり、壁に埋め込まれた大きな水槽を真横から眺めることが可能。年齢ごと、在来種・外来種などに分けて展示されたサケたちを、まるで水族館のように楽しみながら見ることができます。

▼屋外かんさつ池には大きなイトウが

外へ出ると屋外かんさつ池があり、大きなイトウが常時悠々と泳いでいます。ぜひエサをあげて、食べる様子を観察してみてください。また、9月から12月中旬頃にかけてはサケの産卵行動も展示しているので、必見です。

▼趣のある雰囲気のさかな館

▼さかな館内部には、これまた多くの水槽!

豊平川さけ科学館には、本館とは別に、さかな館という建物もあります。ここでは主に札幌近郊の水辺の生きものを展示しているので、市民にとってはより身近に感じられるかもしれません。日常の中で何気なく目にしている豊平川に、実はこんなに様々な生きものがいるのだという驚きは、実際に目にしてこそ。科学館を訪れた際には、ぜひこちらにも足を運んでみてください。

普及活動を積極的に

▼豊平川さけ科学館のスタッフ(左より小口涼さん、前田有里さん、佐々木北斗さん)

また豊平川さけ科学館では、普及活動の一環としていろいろなイベントも実施しています。大きなものとしては、やはりゴールデンウィークに行われる稚魚の放流。体験放流では毎年4000人ほども集まり、約5万匹もの稚魚が豊平川に放たれます。

9月になれば、帰ってきたサケをお祝いする「さっぽろサケフェスタ」が開催されます。サケの重さ当てクイズなど、楽しみながら学べる企画はぜひ親子で参加したいところ。無料で、申し込み不要というのも、気軽に訪れられるうれしいポイントです。

もちろん、こうしたイベントとは別に、スタッフによる普及活動は日常的に行われています。幼稚園から高校まで、授業の一環として科学館での講義を取り入れている学校も多くあります。

こうした努力により、現在では毎年1000から2000匹ものサケが回帰し、そのうち7割が自然産卵によるものだといいます。「豊平川にサケを呼び戻したい」という市民の願いは、数十年の時を経て、実を結びつつあるのです。(※豊平川では、自然産卵に由来する野生サケ(ワイルドサーモン)を優先的に保全していくことを目的としています。そのため、稚魚の放流数をコントロールする取り組みをはじめています。詳しくは「札幌ワイルドサーモンプロジェクト」サイトをご覧下さい)

楽しみながら、分かりやすくサケについて学べる豊平川さけ科学館。訪れた後は、いつもの豊平川の風景が、より豊かなものとして目に映るかもしれません。

札幌市豊平川さけ科学館
所在地:北海道札幌市南区真駒内公園2-1
電話番号:011-582-7555
公式サイト

開館時間:9時15分~16時45分
休館日:毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は次の平日)/12月29日~1月3日
入館料:無料