活火山「有珠山」の山頂はどうなってるの?有珠山登山口から登ってみた

北海道の火山というと、まず思い浮かべのは、2000年(平成12年)の噴火が記憶に新しい有珠山でしょう。北海道南西部にある洞爺湖の南、内浦湾との間に位置し、伊達市、洞爺湖町、壮瞥町にまたがり周期的に噴火している世界的に見ても活発な火山ですので、噴火を二度三度と目の当たりにしている方も多いでしょう。

▼道の駅とうや湖より撮影

記録に残っている噴火は以下のとおり。

・1663年 寛文噴火(寛文3年)
・1769年 明和噴火(明和6年)
・1822年 文政噴火(文政5年)
・1853年 嘉永噴火(嘉永6年)
・1910年 明治噴火(明治43年)
・1944-1945年噴火(昭和19-20年)
・1977-1978年噴火(昭和52-53年)
・2000年噴火(平成12年)

こうしてみると、ここ100年の間に4回の噴火があり、単純に計算すると25年くらいに1回は噴火する恐れがあると考えられます。さらに有珠山は頂上からというだけでなく、2000年噴火のように麓で噴火することもあるため、将来の噴火に備えた様々な取り組みが行われています。

▼1977年噴火の様子

有珠山は噴火を繰り返すたびに山の形が大きく変わります。7000-8000年ぶりに噴火を再開した1663年にできた大きな火口の一部が、南外輪山と呼ばれる尾根筋として残っています。

大有珠(733m)や小有珠(557m)はその後の江戸時代の噴火で盛り上がった溶岩ドームで、大有珠と小有珠の間に連なる有珠新山(669m)の崖は1977-78年噴火に伴う断層運動で200m近くも隆起してできました。

大有珠と小有珠の間にあった小さなオガリ山溶岩ドーム(672m)はこの断層運動に巻き込まれて分断されてしまい、白い蒸気をあげている銀沼火口は1977-78年噴火でできた最大の火口です。

山に登ればこれらの火山地形を間近に見ることができますので、さっそく登って火山の姿を見に行くことにしました。

▼左から大有珠、有珠新山、小有珠

有珠山へのアクセス

現在、有珠山にはロープウェイや登山道を使って登ることができます。ロープウェイを使ったとしても噴煙を間近で見たいとなると、遊歩道を1時間ほど歩くことになります。

遊歩道といっても山の上、高低差の激しい階段や天候の急変等を考えると、一般的な登山の用意が必要となりますし、登山道を使っても麓の駐車場から1時間ほどで登れますから、今回は登山道から登ることにしました。

伊達市有珠町を通る国道37号線を走ると、有珠山登山口の看板が見えてきます。道なりに進むと正面に道央自動車道の跨道橋があり、その手前の左に駐車場があります。

駐車場から登山道入口までは歩いてすぐなのですが、砂防堰堤のすぐ脇が登山道となっているため、改めて火山へ登るということを意識します。有珠山は一部、前回取材した樽前山と同じように外輪山を持つ火山で、1時間ほど登ると整備され外輪山遊歩道となっている外輪山の尾根へ出ます。

そこへ出てから左へ行くと南外輪山展望台、右へ行くと火口原展望台及びロープウェイ頂上駅へ向かうことになります。南外輪山展望台がすぐ間近に見えているので、まずはそちらへ向かうことにしました。

綺麗な景色と過酷な自然を観賞できる展望台

南外輪山展望台へ向かうとすぐに、有珠山を背にして有珠善光寺奥の院が建っています。

▼山の平穏と道中の安全を祈願し、先へ進む

南外輪山展望台では、綺麗な景色とともに中央火口丘の全貌を見ることができるので、お勧めの場所です。山の反対側も綺麗に見え、有珠山が洞爺湖と内浦湾の間にあることがわかります。

▼有珠山全景。左奥には羊蹄山も見える

次は噴煙をより近くから見ることができる、火口原展望台へ向かいます。外輪山遊歩道を戻り、先ほど出てきた登山道を通りすぎると、火口原展望台にある東屋とトイレ施設が見えてきます。

火口原展望台からは、銀沼火口と有珠新山、小有珠の噴煙を間近で見ることができます。銀沼火口を見ていると、1977年噴火の前まで水と緑があふれ、沼にボートを浮かべていたり放牧されていたとは全く想像できません。

▼銀沼火口と有珠新山裾から立ち上る噴煙

▼小有珠から立ち上る噴煙

火山を間近に感じる外輪山遊歩道

火口原展望台からロープウェイ山頂駅へ向かって外輪山遊歩道を進み、火口原と反対側には内浦湾が綺麗に見えるのですが、ちょっと目線を落として斜面を覗くと、なんと、草の間からも水蒸気が立ち昇っています。現在立っている場所は活火山の上であることを改めて実感します。

外輪山遊歩道は、有珠山の南側から東側にかけて回り込みながら火口の様子を見ることができます。1977年の噴火以来40年経過しているため(2000年噴火では主に西側に位置する西山山麓、金毘羅山山麓の噴火)、若齢林や湿原生態系を観察することができる貴重な場所でもあるようです。外輪山内部の荒涼とした中に生える緑を見ると、生命の力強さを感じる風景です。

そのまま外輪山遊歩道を歩いてロープウェイ山頂駅を目指すのも良いですが、覚悟してください。先は登りとなっており途中には、斜度45度269段の階段が待ち受けています。

▼269段の直線階段の後も登りで、全部で600段ほどあるとか

もちろん階段を上りきった先も見どころ満載です。

▼すり鉢状にえぐれた銀沼火口。縞模様になっている地層で、これまでの噴火の回数がわかる

▼ロープウェイ山頂駅から見える大有珠の溶岩ドーム

実際に火山へ登ることによって、噴火の規模を知ることができ、地球の力というものに圧倒されます。有珠山へ登ろうとお考えの方は、有珠山に関して色々と調べてから登ってみてください。普通の登山では味わえない魅力と、火山に対する意識の変化を感じられるはずです。

有珠山について詳しく知りたいという方は、2009年に世界ジオパークに登録された「洞爺湖有珠山ジオパーク」を巡ってみることをお勧めします。